西村幸祐の仕事

           
 
 

北朝鮮を崩壊させる法、あります。-1 

北の人民は反日でも反米でもない。十年の収容所生活から脱出した亡命記者が明かす北朝鮮の現状。
月刊「諸君!」2003年11月号掲載

姜哲煥(カン チョルファン)朝鮮日報記者
構成・文/西村幸祐

 

 拉致問題に関心を持ち、北朝鮮の歪んだスターリニズム体制を批判する日本人の間でも脱北者への関心はさほど大きくない。しかも、「救う会」「家族会」をサポートするための情報交換が最も盛んなネット上でも、脱北者には批判の声さえ寄せられている。北朝鮮亡命者が日本に理不尽な要求を行うのではないかという危惧も多く、脱北者への無関心は、やがて現れるであろう大量の難民への拒否感と共に、日本人にとって構造的・歴史的なバリアーにまでなってしまったのだ。

 恐らくその大きな原因には、在日韓国人、朝鮮人が本国の反日政策に呼応し、日本で反体制的な活動を繰り広げ、権利拡張運動のみが報道されて来たという事が挙げられるだろう。また、在日コリアンが <共生> という言葉を使う時も、ほとんどそれは <差別される側の論理> としてのテクニカルタームになって来たという倒錯した現実がある。実際、日本定住に関わる義務を無視し、一方的に日本への謝罪・賠償と権利拡張を主張する <在日> というイメージは、特に二〇〇二年日韓W杯以降、韓国で噴出した特異なナショナリズムと相まって、少なからぬ日本人にとって苛立ちの原因になってきたのだ。

 しかし、崩壊する政権は断末魔の叫びとして、大量の亡命者を発生させるという歴史的法則を忘れてはならない。拉致問題の解決を願い、北朝鮮政権の打倒を目指す日本人ならば、少なくとも今以上の関心を脱北者と北朝鮮の人権問題へ寄せるべきである。亡命者が増えれば増えるほど、金正日体制の崩壊が近づくことはあっても、遠ざかることは絶対にないからだ。

 しかも、地球上最後と言っていい、陰惨で残虐な強制収容所の実態が明らかになっているのだから、人道上という見地からは勿論だが、北朝鮮の強制収容所を消滅させることが日本の国益に繋がるという側面も看過してはならない。

 いや、言い換えれば、日本の国益に沿うような脱北者支援、収容所廃絶の道を探るべきなのである。というのも、そうしなければ、日本人の立場を無視した脱北者支援のみが主流になり、ますます日本は北朝鮮問題の主導権を国際的に保持できなくなってしまうからだ。拉致問題解決のためにも、金正日政権へのあらゆる方向からの、多種多様な圧力が必要なのである。

 

 

「自由」への脱出と「自由」の責任


東海道新幹線や首都高速の工事が急ピッチで進められていた、一九六三年。翌年の東京オリンピック開催のため、日本中が一種のトランス状態に包まれ、高度成長の絶頂期に突き進んでいた。前年大ヒットした映画、「キューポラのある街」がブルーリボン作品賞、「一九六三キネマ旬報・ベストテン第二位」に輝き、主演の吉永小百合もブルーリボン女優賞を受賞し、女優としての地位を不動のものにしていた。

 

 

 

 

Continued・・・

 

 
 
 
 

 


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2004 Kohyu Nishimura