十月十五日、拉致被害者が北朝鮮から帰国して一年が経過した。思えば去年の小泉訪朝の九月十七日から日本中がトランス状態に包まれ、その熱狂が頂点に達したのが十月十五日の被害者帰国だった。「八人死亡五人生存」という情報が日本中に与えたインパクトは強烈で、その後、北朝鮮関連情報があらゆるメディアで溢れ返った。これまでいかに多くのメディアが偏向し、いかに多くの日本人が北朝鮮の諜報活動に籠絡されていたか。それが明かされた一年だったが、事態は一向に動いていない。一年以上経過したのに、なぜ、国家犯罪を認めた国が被害者家族を返さないのか、なぜ、日本が家族を取り戻すことができないのか。そもそも解明まで、なぜ二十五年もかかったのか。それらの疑問を解く鍵は本書に凝縮されている。
初めて明かされたエピソードも多く、家族会の人々がより身近に感じられる。じつは、失われた家族を求め、支え合う彼らが、多くの日本人の共感を喚んでいるのは、日本人の誰にでも当てはまる
<ノン・フィクション> だったからだ。しかも、普通の環境に置かれた日本人が気づかないこと、実行できないこと、決意できないことを、家族会が実行している姿を、自らに置き換えようとしている。家族の崩壊、教育の崩壊、悪化の一途を辿る治安状況から安全保障の問題まで、危機的状況に陥った日本の現状に呻吟する私たちが、彼らに自らを投影しているのだ。
彼らは、図らずも戦後日本の矛盾に直面させられている日本代表だからだ。家族を奪還したいという叫びが、失われた日本を取り返したいという願いと同義であることを彼らが身を以て私たちに訴えている。「この国はあなたを守ってくれるだろうか」と蓮池透氏があとがきで述べているが、日本を去勢された状態に強いてきた政治家、メディア、日弁連などの人権団体、そして何よりも北朝鮮への怒りを忘れてはならない。抑制のとれた文体も素晴らしく、彼らの怒りと嘆息が行間から滲み出ている。全国民必読の書といっても過言ではない。
家族
北朝鮮による拉致被害者家族連絡会 (著)
価格: ¥1,600 (税込)
目次
第1章 主は与え、主は取られる―横田めぐみ
第2章 わしは日本を信じるッ!―市川修一・増元るみ子
第3章 後はお前らが引き継ぐんや―地村保志・浜本富貴恵
第4章 あの人は強力な味方や―松木薫・有本恵子
第5章 「子供を守りきる」闘い―原敕晃・田口八重子
第6章 泣きたいときは泣いていい―蓮池薫・奥土祐木子
第7章 人間、口と腹とは違うんや―寺越昭二・寺越外雄/寺越武志
第8章 曽我ひとみさんからの手紙
「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」が編んだドキュメンタリー。真実のみが暴き出す、国家とは、日本人とは、そして家族とは…。苦悶、空白、やり場のない魂の慟哭を一挙掲載。